第5回講演会 子どもが育つみちすじ
まあ、クラウスという新生児学者が、「母子の絆」とこれを呼びましたけれど、私の時代は、私は二人の娘がいますが、特に上の子は大きな病院で産みましたから、もちろん新生児室に連れ去られた組です。
で、それは、新生児期は大変危ない時期でもあります。弱いですからね、だからまあ丁度いい温度だとか湿度だとか、そういうよい環境の中におかないと危ない ということで、新生児室というのが考えられたんでしょうけれど、動物がそうであるように、つまり生まれた瞬間が一番敏感なんです。この時に臭いをかいだ臭 い、たとえば牛の赤ちゃんが生まれ、たまたまこの時お母さんじゃない別の牛が育てようと思うと簡単なことなんですよ。育ての親になってもらう牛の臭いのし みこんだ布を生まれた瞬間にその赤ん坊に嗅がせたら、実の親でもなんでもありません、この臭いだけで生涯これが母だと思います。これをすり込みといいます が、ものすごく深くすり込むんですね。
初めて聞く声、お腹の中によーく聞こえてますから、胎内にいる赤ちゃんっていうのは大変よく声を聞いています。「これは秘密よ」なんてお母さんが言って も、全部赤ちゃんは盗み聞きしている訳で、一緒に歩いていますからね。お母さんの声を10ヶ月聞いてますから、この世に生まれてきて未知の世界に赤ん坊は 放り出された瞬間の孤独と恐怖は大変なものだろうと思いますが。
心理学者はこれを出産外傷説(トラウマ)だと言ってるぐらいですが、私たちみんな、お母さんの胎内、自然で豊かで満ち足りたね胎内から飛び出してきた瞬間 の恐怖と孤独というのは、私たちが、たまたまずっとそれを記憶にしていないから生きのびているだけで、心の奥深いところでは大きな喪失感、不安感を持って いるだろうと心理学者が解説してみせるのはそういうことでしょう。
で、その時にね、お母さんがね、すぐ生まれてすぐお母さんの声を聞き顔を見て臭いをかいで味をみて、肌の感触、五感ですね。これはやっぱり大きいだろうなと思います。
そして、彼と私とで自然出産育児懇話会という会を昨年発足させましたけれど、三回助産師さんたちとご一緒に、出来る限り自然な出産、私も自分の子どもが新 生児室にいっていて、おっぱいをあげる時だけ出かけていっておっぱいをあげるというふうにして、子どもを育てた訳で、だから駄目になったとは言ってませ ん。勿体なかったと思っています。
できれば皆さんもそうであったと思いますよ、私もそうでしたから。
昔、黒丸清四郎っていう有名な児童精神科医がおられまして、先生がかつておっしゃった言葉も同じで、ご自分の娘さんの出産に立ちあわれて、新生児室に子ど もが連れ去られるのをみて、「お願いだからそばに置いておいてほしい」って頼んだけれども無理だった。あれは残念なことをそました。って今から30年ほど 前に、黒丸先生おしゃっておられて、「あーあさすがだなぁー」と今思い返します。
ですからね、そういうことを知らないと知ってるでは違うんですね。まずそこで、母と子。
で、お父さんもそこで参加する、早いうちからお父さんが我が子の生まれたすぐのところで参加して、子どもが本当にこの世に生まれてきて、自分の子どもとし て出会いがあって、そして、私が「こんにちは赤ちゃん、私がママよ、私がパパよ、あなた我が子よ」っていうねぇつながり方を持つ。大変自然な営みなんです ね。これが基本かなぁ、と。できたらそうあることは随分違いを呼ぶだろうと思いますが、まあその続きで一年間、皆さん保育なさる時もそうで、同じ事なんで すが、今申し上げたように、赤ちゃんはその五感を通して世界を感ずるんですね。
