第5回講演会 子どもが育つみちすじ
動かそうと思わない限り、手は絶対に動きません。みなさんね、“動かそう”と思う、これ意志です。だから、ここでキーワードはいくつも出てきます。この時 期に意志ということ、自分の考え、自分の頭で考えない限り、手は1ミリも動きません。動かそうという意志ですね。それによって手が動く。だからもう、腹を たててお母さんがにぎらせようと思って、ガーッといく。これは他人が動かしているんです。本人の意志ではありませんね。動かすというのには、もっとすごい のは、ここで排泄ですね。
いちばん大きいのは排泄ですが、排泄というのは、神経のコントロールでしょう。排泄、おしっこが溜まる、溜まったかんじがわかって、そしてそれを、これはコントロール力がいる訳です、これが自律心ですが、
自分で自分のコントロールをする。それも、礼儀正しくね。どこでもしていい訳じゃない。
こういう場所でね、トイレの場所で、トイレの便座で、便器で、ちゃんとしゃがんで、
「さぁーいいよ」って言ったら、蛇口をひねるようにジャーッと、それより前だったら早すぎる。じーっと座ってなかなか出なかったら、やがてタイミング合わせるまで練習して、ちょうどタイミングよくする。簡単なようですが、むずかしいんですよ。
この神経がね、ちゃんとコントロールをして、膀胱や肛門の筋肉を支配している神経がおごそかに「さぁーよし」っていうので、ちゃんとおしっこやうんこを出す訳でしょう。
そして、それもちゃんと決められた場所できちんと座って、そして、パンツを下ろしたり上げたり手を洗ったり、一連の作業を。
あなたは人になった。人間になるには身を美しくしましょうね。どういう方法でやっても、体は健康でいいんだけども、人間である限りは身を美しくしましょう ね。これが、躾でしょう。だから、躾というのは、人間社会を生きていくためのルールを教えていく、原則を教えていくということで、この時期にあっているの ですが、この自律心ということ。自分が自分の体をコントロールする喜び。いいですか、自分が自分の体を、法律の律ですから、コントロールする、調節する喜 び、それが一番育つ時なんです。だから嬉しくてね、おしっこし始めた子どもが、もう見て見てって顔していますよね。僕上手にしたでしょう。
ご飯、お箸上手に持てるようになった、見て見て。コップで飲めるよ、とか。洋服こうやって着れるよ。口をとんがらしてね。ボタンをこうやって小さな手で、ボタンのホールをこうやって通して、さあ出来たって言いますよね。
その瞬間、これは出来るということは簡単じゃないんですよ。本当に障害を持ったお子さんを見ていますと、本当に一本神経が切れるともう動きませんからね。それを一生懸命、障害児たちも訓練をして、訓練をして自分の力を身に付けていこうとしている訳です。
普通の子もそうです。普通の子の方が簡単だと思うかもしれませんが、どの子も最初から出来る子はいない。だから、昨日あんな失敗した、でも今日はここまで出来た。すごいことをやってのけたね、って言うと、そうか「自分には力があるんだ」と思いますね。
で、これをね同じように、同じことですが、身を美しくするためにビシビシとむちで叩きのめしてね、「お兄ちゃんはたしかもう一歳何ヶ月の時やってのけたの に」とか、「おしっこはちゃんと出来たよ」とか、「お隣の○○ちゃんはもうあそこまでやってるのにあなたは・・・」って言われる。そうすると、泣き泣き僕 はダメなんだ、ダメなんだと思って、おしっこやうんこが出来て、お箸を使えるようになるとしても、自律心は駄目になります。自分には自分の力があって、意 志力を働かせて面白いほど、自分を自分でコントロール出来るという、これは自分に対する大きな自信になります。
大人になった時も、実はみなさんもう忘れ果てておられますが、その時初めてコップの水を飲んだ、初めておしっこやうんこが出来て「出来たー」っていうその 経験が、みなさんの心、奥深いところにあって、大人になっていろいろやる時にも、もしかしたら失敗するかもしれないがやってみよう、自分には自分の力が あってコントロール出来るはずだと、かすかな、なんか心の内側の芽が立ち上がってくる訳です。これ、自律心ですね。
